あんたは裏切らないよね

久しぶりに会った祖母が、突然、大の猫好きに豹変していた。

今まで、動物には何の興味も持っていなかったというのに。
むしろ、嫌っていたといっても過言ではない。

よそのおうちで飼っている猫なのだけれど、ほぼ、放し飼い状態であるため

夜になると私の家の前であたけてる。飛び回っているのだ。

そんなわさかき猫たちに、祖母は毎晩餌をあげに行っているのである。

私も祖母に連れられて、その猫たちに会いに行ったのだけれども。
確かに人懐っこくて可愛かった。祖母には特によく懐いてる。

そして、祖母は


「猫が一番可愛い。素直で正直で裏切らない。」


そんなことを呟いたのであった。

何だかもう、切なくなってしまったのである。

猫好きになったと聞いた時点で、涙の準備は出来ていたように思うのだけれど。
祖母の言葉でどうにも切なくなってしまった。
危うく落涙。

なんだか、祖母も、おばあちゃんになってしまったのだな。
どんどんどんどん、何気なく、そして確実に、歳をとっているのだ。

祖母も祖父も母も叔父も私も、一歩一歩、死に向かって生きているのだ。

「あんたもオレを裏切らないよね」
おばあちゃんは、笑いながら私にもそう言った。


祖母がおばあちゃんになっていってしまうのが寂しいなぁ。
時の流れに救われることもあるけれど、
時の流れに悲しむこともあるものなのだ。

そして、時の流れに悲しんだとき、それを癒してくれるのもまた時の流れなのだろうなぁ。


そう、結局、私はおばあちゃんを裏切らない。
家族を裏切らない。

前に一度、裏切っちゃったから。

もう裏切ることはしない。